母不在の２日目
里帰りは当然、妻の実家である
出産当日はそのまま妻の実家に泊めてもらうことにしていた
移動疲れもあるだろうし、何より長女のとを考えてのことだ
母がいない初めての夜に環境まで変わることは避けるべきだろう
その甲斐もあってか、その夜はすんなり寝てくれたので正解だったと思う
このまま、妻が５日間の入院生活から、帰ってくるまでマスオさん状態で居候するという選択肢もあるのだが、お互い気も使うので自分の実家に移動することにした
どちらかというと妻の実家としてはこのまま孫がいてくれた方が嬉しいようだった
里帰り出産は妻が楽なだけではなく、両親への親孝行にもなっているらしい
でかしたぞ、娘よ！
という訳でうちの両親にも親孝行してやることにした
喜んで自分の息子と孫を面倒みやがれ！
妻の実家からは私の実家は車で１時間程度の距離である
こういう時は妻と地元が一緒なのは助かる
今年の正月はどっちの実家に帰省する？
とか考えなくてすむ
お年玉の回収も楽チンだ
うちの両親に会って早々娘が
「おねぇちゃんになるの！」
と言っていた
自覚はあるようだ
実はもうすでにおねぇちゃんになってるんだけどね
さすがにその実感はないようだ
ちなみに父も姉妹の親になった実感はない
現時点で次女と直接対面しているのは妻だけだ
その晩はご馳走だった
何かしらのポイントで貰ったというサーロインステーキが出て来た
普段の娘は食が細く、牛肉も硬いのであまり食べないのだがサーロインステーキはバクバク食べていた
2歳児にも高い牛肉の美味しさはわかるようだ
余計に普段の安物の牛肉は食べなくなるような気もするが、母がいなくても頑張っているのでご褒美だ
ちなみにサーロインステーキの味付けはなし
塩胡椒を振ると辛いと言って食べないので、味付けなしで焼いてもらい
あとで塩を振りかけて味を調節するようにしていたのだが、塩すらかけるなと訴えてくる
さすがに美味しくないだろうと思うが、長女はそれでご満悦なのでいいのだろう
騙し騙しで少しだけ塩を振ったものも食べさせてみたが、
「なんか付いてる」と変な顔をしていた
そういえばさっきからコーン缶のコーンだけをひたすらスプーンで貪り食べている
コーン缶のコーンってそのまま食べるものでしたっけ？
妻が離乳食が始まった頃から、「素材そのものの味、素材そのものの味」とうるさかったのでその頑張りが効いているのだろう
それにしてもシンプルイズベスト過ぎやしませんかね？
そんなこんなで、環境が変わったにもかかわらず長女は楽しそうに過ごしていた
その夜までは・・・
就寝直前になって、
「おばあちゃん家に帰る」
と言い始めた
さすがにこの時間から妻の実家に行くことはできない
お酒を飲んでいたのでどうしようもない
だが、どれだけなだめても長女は泣きわめくばかりである
おばあちゃん家に帰れば、母がいると思っているのだろうか？
ただなぜかおばあちゃん家に帰りたいと繰り返すばかりで、お母さんとは一言も言わない
こんなに泣き喚きながらも、長女も長女なりに我慢しているのだ
「母さんに会いたい」と言わないのが娘にとっての最後の矜持なのだろう
そんなことを考えながら、長女をそっと抱きしめる
泣き声が大きくなる・・・
妻だとこれで１発なのになぁ〜
父はまだそのスキルは習得できていないようだ
母は偉大である
こうなったら力尽きるまで付き合うしかない
我慢比べだ！
泣いて力尽きては寝て、少し寝て体力が回復したらまた泣き出すの繰り返し
回復ありのパターンだと、最悪エンドレスまであるのか？
と思ったりもしたがさすがに深夜には起きてこなくなった
朝、目を覚ました時にどうなるか心配していたが、本人はケロっとしているからすごい
嫁の実家に戻ることも考えていたのだが、もう一日頑張ってみることにした
日中は母さんとも、ばあちゃんとも、一切言ってこない
これはまた夜に爆発するパターンか？
と思いきや昨日のことがまるで嘘のように、ご機嫌で眠りにつく
子どもの成長とは早いものだ
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