GI値とは血糖値の上がりやすさを表した指標です。
GI値が低く血糖値が上がりにくい方がインスリンの分泌量が抑えられ太りにくいと言われていますよね。
そんなこんなで低GIを売りにした商品が巷に溢れています。
また検索サイトで検索すると簡単に食品のGI値を知ることができますよね。
ここで高GI食品として上げられていることの多いフランスパン。
サイトにより多少の数値のばらつきがありますが、フランスパンのGI値が90以上と表記されていることがほとんどです。
以前にブドウ糖を基準試料とした場合では砂糖のGI値が100を超えることはなく、70ぐらいが妥当であるという話をしました。
そんな訳あるかーい!って人は下記記事を参考くださいw
パンのGI値が高いのは砂糖が入っているからと言う人もいるのに、フランスパンのGI値が砂糖を上回ることなんてあり得るのでしょうか?
結論から言いますとフランスパンのGI値は90を超えていても不思議ではないのです。
そこで今回はフランスパンのGI値が90を超える謎について迫って見たいと思います。
フランスパンのGI値が砂糖より高い理由
GI値と血糖値と炭水化物
先ずはGI値のおさらいから。
GI値とは血糖値の上昇具合を数値化したものです。
血糖値とは血中の糖質の濃度のことですが、正確にいうと血中のブドウ糖濃度のこと。
つまり、ブドウ糖以外の果糖や乳糖などが血中に溶け込んでも血糖値を上げることはありません。
さらにGI値の測定は食物繊維を含まない炭水化物(つまりは糖質)50g分で比較することになっています。
そのため、食材の糖質中のブドウ糖の割合が高いほどGI値が高くなる傾向があります。
基準試料をブドウ糖とした場合ではブドウ糖のGI値が100となります。
よってGI値とは最も血糖値が上がりやすいと考えられるブドウ糖100%(50g)との比較になります。
なので基準試料がブドウ糖の場合はGI値が100を上回ることはほとんどありません。
また、糖質中のブドウ糖の割合が低い食品はGI値が100に近づくことも考えにくいのです。
フランスパンの糖質はブドウ糖100%
ブドウ糖のブドウ糖割合は当然100%なのでブドウ糖の糖質50g中のブドウ糖は50gです。
ちなみに砂糖は果糖とブドウ糖が1つずつ結合した二糖類なので、糖質50g中のブドウ糖は25gになります。
これが砂糖がブドウ糖のGI値を上回ることがない理由になります。
ではフランスパンの糖質は何でできているのでしょうか?
フランスパンはご存知の通り小麦粉で出来ていますよね。
小麦粉の主成分も聞き馴染みのある『デンプン』であることはよく知られていると思います。
このデンプンですが何で出来ているか知ってますか?
デンプンとはブドウ糖が10個以上つながっている多糖類です。
つまりデンプンはブドウ糖だけで構成されていて、消化吸収の過程で全てブドウ糖まで分解されます。
よってフランスパンの糖質50gにおけるブドウ糖の量はほぼ50gになるのです。
フランスパンのGI値がブドウ糖が25gしか含まれていない砂糖を上回っても何ら不思議はないのです。
ちなみにご飯やジャガイモの糖質の主成分もデンプンなのでご飯の糖質もほぼ100%がブドウ糖です。
身近な糖質の中では果糖が50%も含まれている砂糖の方が特殊とも言えそうです。
ちなみに食パンは砂糖を使用することが多く、糖質50g中の果糖の割合が増えてブドウ糖の割合が減ってしますため、フランスパンよりもGI値は低くなりがちです。
砂糖を入れるとGI値が高くなるイメージがありますが実はパンの場合は砂糖を入れるとむしろGI値が下がるのです。
血糖値が上がりにくい方がGI値が高くなる⁈
フランスパンが砂糖のGI値を上回ることは同じ糖質(食物繊維を含まない炭水化物)50gのブドウ糖の量で説明が出来ました。
ではフランスパンがブドウ糖のGI値に匹敵する90以上を叩き出すのはどういうことでしょうか?
ブドウ糖はすでに糖質の最小単位である単糖であるため吸収スピードが早く血糖値の上昇も早いことが特徴です。
それに対しフランスパンの主成分であるデンプンは吸収するために単糖(ブドウ糖)まで分解する必要があるため、吸収に時間がかかります。
血糖値のピークや上昇スピードでいうとブドウ糖がフランスパンに圧勝しそうな気がします。
なのになぜかフランスパンのGI値はブドウ糖を大きな差はありません。
なぜでしょうか?
GI値はグラフ面積の比較
高GI食品は血糖値の上昇が激しく低GI食品は血糖値の上昇が緩やかと聞くと血糖値の上昇スピートが早ければ早いほどGI値が高くなりそうな印象があります。
ただし一概にそうとは言えない場合があります
これは GI値が血糖値のピーク値やピークに至る時間の比較ではなく、血糖値の経時変化を描くグラフの面積を比較した指標だからです。
ちょっと何言ってんだか分かりませんよねw
ざっくりいうと標高が高い急峻な山よりも、標高は低いけどなだらかな山の方が面積が稼げることがあるのです。
ブドウ糖は面積としては損している
血糖値を最も上げやすい食品として基準試料にされやすいブドウ糖ですが、血糖値のグラフの面積を稼ぐ点では不利な部分もあります。
山のグラフの面積を稼ぐには頂上が高くなだらかな方が有利です。
ブドウ糖は血糖値の急上昇させるので頂上の高さと頂上に至るまでのスピードは一番です。
ただし、血糖値が急上昇してしまうことでインスリンという血糖値を下げるホルモンが分泌されてしまします。
血糖値が高くなるほどインスリンの分泌量も増え急激に上がった血糖値は急激に下がってしまうのです。
よってグラフの面積を稼ぐことに関していうとインスリンが分泌して血糖値を下げてしまう分だけ不利になってしまうのです。
同じ量のブドウ糖を摂取した場合はゆっくり吸収される方がインスリンの分泌量が抑えられ血糖値グラフの面積を稼ぐ点では有利になるのです。
実はブドウ糖のように急激に血糖値が上昇するものは大量のインスリンが分泌してしまい血糖値が急降下するような食品は面積が小さくなり、上昇速度やピーク値は低くても長時間血糖値を上げ続ける食品は面積が大きくなりGI値が高くなる傾向があります。
測定時間は2時間
血糖値グラフの面積だけを比較した場合はインスリンが分泌してしまう食品より、血糖値を上げにくくインスリンが分泌しにくい食品の方がGI値が高くなります。
ただしこれは血糖値の計測期間を無限大にした場合の話です。
計測期間が無限大の場合はブドウ糖より果糖の方がGI値が高くなるなんてこともあるかもしれませんw
しかし実際にはGI値を測定するための血糖値の計測期間が2時間とされています。
よっていくらインスリンが出にくく血糖値が高い状態をキープして面積を稼ごうと思っても、血糖値の上昇スピードが遅すぎたりピーク値が低すぎると面積が稼げなくなるのです。
フランスパンのGI値が90以上とブドウ糖の100に近い値を叩き出すのは、ブドウ糖の割合が100%に近いことと、血糖値の上昇スピードが速すぎもせず遅すぎもしないことから説明がつきます。
もう少し血糖値の上昇スピードが早ければGI値が100を超えることも夢ではなかったかもしれませんw
まとめ
最後にまとめです。
ブドウ糖のGI値を100とした場合にフランスパンのGI値が90を超えるのは妥当な値であると言えます。
これはフランスパンを構成する糖質(食物繊維を含まない炭水化物)のほとんどはデンプンであり、そのデンプンはブドウ糖100%で構成されていることにより説明ができます。
ブドウ糖の糖質50g(ブドウ糖50g)とフランスパンの糖質50g(ブドウ糖50g)を比較した場合では、同じ量のブドウ糖が血液中に取り込まれることになるので血糖値の上昇量が似たような値になるのは当然です。
ただし、デンプンはブドウ糖に分解するまでに時間がかかるため、ブドウ糖単位と比較すると血糖値の上昇速度やピーク値が低くなります。
一見すると血糖値の上昇速度やピーク値が高い方がGI値が高くなるイメージがあるため、吸収スピードが遅いとGI値を低くしてしまいそうです。
しかし、GI値とは血糖値グラフの面積の比較であるためむしろ血糖値の上昇スピードが遅い方が面積を稼ぐには有利に働く可能性すらあります。
よってフランスパンがブドウ糖に対して血糖値の上昇速度やピーク値が低くても、ブドウ糖に匹敵するGI値を叩き出しても何ら不思議ではないのです。
ちなみに最もGI値が高い印象のあるブドウ糖単体ですが、実はGI値が100を超えるものも存在し得ます。
基準試料をブドウ糖とした場合でもGI値が100を超え得るマッチョ御用達の『マルトデキストリン』についてはまた後日w
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